救急診療・総合診療・小児診療・CT/MRI
きくち総合診療クリニック

救急診療・総合診療・小児診療・CT/MRI
きくち総合診療クリニック

LINE友だち追加Instagram

総合診療かかりつけ医が全国に拡がれば、
地域医療は守られる

ブログ

Blog

私が救急で経験した若すぎる死 58歳女性

58歳の女性。

最初は、右脚のむくみでした。

本人は「膝か、血流の問題かな」と考えて整形外科を受診しました。

骨や関節には大きな異常はない。

「整形外科的には問題ありません。」

しばらくすると、今度は息切れが出てきました。

「心臓かもしれない」

そう思って、今度は循環器内科を探しました。

心電図。心エコー。

大きな心臓病は見つからない。

「循環器としては大きな異常はありません。」

さらに数週間後、食欲が落ち、お腹が張るようになりました。

今度は自分で消化器内科を探しました。

胃カメラを受ける。

胃には大きな異常はない。

「消化器内科としては大丈夫そうです。」

患者さんは、三つの専門科を受診しました。

どの先生も、それぞれの専門分野をきちんと診ています。

整形外科は、整形外科の病気を診た。
循環器内科は、心臓を診た。
消化器内科は、胃腸を診た。

それぞれの専門医は、自分の領域を守った。

しかし――

誰が、この女性そのものを診ていたのでしょうか。

右脚のむくみ。
息切れ。
食欲低下。
腹部膨満。

これを一人の医師が全部聞いていれば、

「これ、本当に別々の病気なのか?」

と考えたかもしれません。

実際には、骨盤内に進行した悪性腫瘍があり、静脈を圧迫していました。

右脚には深部静脈血栓ができていました。

そしてある朝、女性は突然、

「息ができない」

と言って倒れます。

大量肺塞栓。

救急搬送されましたが、亡くなりました。

58歳でした。

ここで私は、専門医を批判したいわけではありません。

専門医は必要です。専門医には専門医の役割があります。

問題は、

患者自身に「自分で何科に行くか」を決めさせている医療です。

患者さんは医師ではありません。

脚がむくんだとき、それが整形外科なのか、心臓なのか、血栓なのか、がんなのか。

患者さんに分かるはずがない。

だから本来は、

「あなたは何科に行きますか?」ではなく、まず一人の医師が全部を診る。

そして、

「これは専門医にお願いするべきだ」

と判断したときに、専門医につなぐ。

今の医療では、患者さんが自分で専門医を探します。

そして専門医は、自分の専門分野に病気がないことを確認します。
しかし、すべての専門科で「異常なし」と言われても、患者さんが健康だとは限らないのです。

お亡くなりになるには、早すぎました。

手遅れになる前に助かる命でした。