- 80歳女性:最近もの忘れが増えた
家族は認知症を心配して、もの忘れ外来を考えた。ところが、かかりつけ医が薬を確認すると、数か月前から睡眠薬が増えていた。薬を調整すると、日中のぼんやりや物忘れがかなり改善した。
→ 原因は「認知症」ではなく薬の影響だった。
- 76歳男性:同じことを何度も聞くようになった
認知症かと思われたが、よく話を聞くと最近ほとんど眠れていない。家族から「いびきがひどく、息が止まっている」と聞き、睡眠時無呼吸を調べたところ重症だった。治療後、日中の集中力が改善した。
→ もの忘れの背景に睡眠障害があった。
- 82歳女性:急に忘れっぽくなり、歩き方もおかしい
「年齢のせい」「認知症が進んだ」と家族は思っていた。しかし数週間前に転倒して頭を打っていたことが分かり、CTを撮ると慢性硬膜下血腫が見つかった。
→ 認知症と思い込んでいたら、治療できる脳の病気だった。
- 78歳男性:元気がなく、ぼーっとしている
家族は認知症を疑ったが、かかりつけ医が血液検査をすると甲状腺機能低下症が見つかった。治療すると活動性や認知機能が改善した。
→ 全身の病気が「もの忘れ」に見えていた。
- 85歳女性:最近急に話がかみ合わない
認知症ではなく、発熱も目立たない尿路感染症と脱水による「せん妄」だった。感染症と脱水を治療すると、数日でかなり元に戻った。
→ 急な認知機能低下は、認知症とは限らない。
もの忘れ外来でアルツハイマー型認知症と診断され、薬をもらった。でも、その患者さんには高血圧、糖尿病、腰痛、不眠、頻尿があり、5つの医療機関から薬が出ている。誰が全部を見ているのか分からないということが、一番困ります。
ここで総合診療かかりつけ医がいれば、認知症そのものだけでなく、薬、転倒、食事、運転、家族の介護負担までまとめて診られる。必要なときだけ専門医と連携します。
もの忘れは、脳だけを診ればいい症状ではありません。
薬も、睡眠も、全身の病気も、生活も、家族も診る。
だから私は、もの忘れこそ、まず総合診療かかりつけ医に相談してほしいと思っています。