救急診療・総合診療・小児診療・CT/MRI
きくち総合診療クリニック

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総合診療かかりつけ医が全国に拡がれば、
地域医療は守られる

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たった一人の患者さんから教えていただいた話

私がなぜ病院の救急医を辞めて、地域の総合診療かかりつけ医になったのか、

一人の患者さんのお話をさせてください。

今日お話しする話は、教科書から学んだものではありません。

たった一人の患者さんから教えていただいた話です。

私は医師になって22年になります。

救急医として、多くの命と向き合ってきました。

心筋梗塞、脳卒中、交通事故、心肺停止。

一分一秒を争う現場で、命を救うことだけを考えてきました。

その仕事に誇りを持っていました。

しかし、どうしても忘れられない患者さんがいます。

今日は、その方から教えていただいたことを、皆さんにお話ししたいと思います。

 

一秒でも早く診断し、一秒でも早く治療する。

それが救急医の仕事でした。

その仕事に誇りを持っていました。

70代の男性です。

半年の間に、同じ方が三回、救急車で運ばれてきました。

最初は転倒でした。

頭を打ったのでCTを撮りました。

脳出血はありません。

骨折もありません。

採血も異常ありません。

「大丈夫ですよ。」

そうお話しして帰宅されました。

私たちは、その日の診療としては間違っていませんでした。

二回目は数か月後です。

今度は脱水でした。

食事があまり取れず、水分不足になっていました。

点滴をすると元気になりました。

血液検査も改善しました。

「水分をしっかり飲んでくださいね。」

そう説明して帰宅されました。

この時も、医学的には間違っていませんでした。

そして三回目です。

夜中に救急車で運ばれてきました。

意識障害でした。

肺炎でした。

すぐに入院し、治療を行いました。

しかし、その数日後、亡くなられました。

私は亡くなられたあと、カルテを全部読み返しました。

すると、一つのことに気づきました。

私は三回とも、病気は診ていました。

でも、その方の生活は、一度も診ていなかったのです。

なぜ転倒したのか。

歩く力が落ちていたのではないか。

なぜ脱水になったのか。

買い物に行けなくなっていたのではないか。

薬はちゃんと飲めていたのか。

食事は作れていたのか。

一人暮らしだったのか。

認知症は始まっていなかったのか。

誰も、そのことを聞いていませんでした。

救急外来では、命に関わる病気を見逃さないことが最優先です。

しかし、その患者さんを本当に救うチャンスは、三回目に救急車で運ばれてきた日ではなく、一回目や二回目だったのではないか。

私は今でもそう思っています。

あの患者さんは、何か月も前から私たちにSOSを出していました。

転倒という形で。

脱水という形で。

食欲低下という形で。

でも、そのSOSを「生活」という視点で受け止めることができませんでした

そのとき、私は初めて思いました。

病院は病気を治療する場所です。

でも地域には、「病気になる前の変化」に気づく医師が必要なのではないか、と。

だから私は病院を辞めました。

救急医療を否定したかったわけではありません。

むしろ、救急医療を経験したからこそ、その前の医療の大切さを痛感したのです。

総合診療かかりつけ医は、風邪だけを診る医師ではありません。

患者さんの生活を知り、家族を知り、薬を全部把握し、小さな変化を見逃さない医師です。

私は今でも思います。

もし定期的に生活の様子まで診ることができていたら。

結果は違っていたかもしれない。

その思いが、今も私の診療の原点になっています。

総合診療かかりつけ医が全国に拡がれば、ご高齢の方を救うことができる

普段から1人の患者さんのすべての病気のこと、生活のことを知っておく

それが、患者さんを助ける方法だと信じています