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皆さん、これから日本はどうなっていくでしょうか。
高齢者は、これからますます増えていきます。
一方で、医師や医療機関は、地域によっては減っていきます。
では、そんな時代に、高齢者の皆さんが一番大切にしなければならないことは何でしょうか。
私は、「大きな病院に通い続けること」ではないと思っています。
もちろん、大学病院や総合病院はとても大切です。
がんになった。
心筋梗塞になった。
脳卒中になった。
難しい手術が必要になった。
こういうときには、専門医の力が必要です。
ですから、専門医療を否定するつもりは全くありません。
でも、少し考えてみてください。
80歳、85歳になったときに、
循環器内科で血圧の薬。
糖尿病内科で糖尿病の薬。
整形外科で痛み止め。
泌尿器科で前立腺の薬。
脳神経内科で認知症の薬。
全部合わせると10種類、15種類。
ところが、
「この薬とこの薬を一緒に飲んで大丈夫なのか」
「最近ふらついているのは薬のせいではないのか」
「食欲がなくなったのは病気なのか、薬なのか」
「最近歩けなくなってきているけれど大丈夫なのか」
こういうことを、誰が全部まとめて見てくれているでしょうか。
ここが、これからの高齢者医療で非常に大切になるところです。
私は、高齢者にとって一番大事なのは、
病気を一つ一つ診てもらうことではなく、
自分自身を丸ごと診てもらうこと
だと思っています。
高齢者になると、一つの病気だけを持っている人はむしろ少なくなります。
高血圧もある。
糖尿病もある。
腰も痛い。
膝も痛い。
夜眠れない。
少し物忘れも増えてきた。
こういう状態が普通です。
だから、
「心臓だけ診ます」
「腰だけ診ます」
「糖尿病だけ診ます」
という医療だけでは、足りなくなってくるのです。
大切なのは、
その人が歩けているか。
食べられているか。
眠れているか。
薬をちゃんと飲めているか。
転んでいないか。
認知機能が落ちていないか。
家族が困っていないか。
そこまで含めて診ることです。
私は、高齢者にとっての長生きというのは、
単に血圧の数字が良いとか、
血糖値が良いとか、
コレステロールが下がったとか、
それだけではないと思っています。
自分の足で歩ける。
自分の口で食べられる。
自分でトイレに行ける。
人と話せる。
笑える。
これが非常に大切です。
極端に言えば、
検査の数字が全部きれいでも、
歩けなくなって寝たきりになってしまったら、
本当にそれが、その人にとって一番良い医療だったのか。
私たちは考えなければいけません。
そして、もう一つ大切なことがあります。
それは、
「何かあったときに、最初に相談する医師を一人決めておくこと」
です。
例えば、
「最近なんとなく食欲がない」
「少し息切れする」
「足がむくんできた」
「昨日転んだ」
「最近ちょっと物忘れが増えた」
この段階で相談できる医師がいるかどうか。
これは非常に大きいです。
病気というのは、最初から
「私は肺炎です」
「私は心不全です」
「私はがんです」
と名札をつけてやってくるわけではありません。
最初は、
「なんとなくだるい」
「食欲がない」
「少し息苦しい」
そんな小さな変化から始まります。
だからこそ、
普段からその人を知っている医師
が必要なのです。
「いつもと違う」
これに気づけることが大切なのです。
大学病院に毎月通って、薬をもらっている。
総合病院に何年も通っている。
もちろん、それが必要な病気もあります。
しかし、
大きな病院に通っていること自体が、長生きを保証してくれるわけではありません。
専門医は、必要なときに必要な専門治療をしてくれる。
それは非常に大切です。
でも、その治療が終わったあと、
日々の血圧を見る。
薬を整理する。
風邪を診る。
転倒を診る。
食欲低下を診る。
認知症の始まりを診る。
こういう日常の医療を誰が担うのか。
私は、ここに総合診療かかりつけ医の役割があると思っています。
理想的な医療は、とてもシンプルです。
普段は、かかりつけ医が診る。
難しい病気が見つかったら、専門医に紹介する。
必要な検査や手術を受ける。
そして治療が落ち着いたら、
また、かかりつけ医のところへ戻ってくる。
この循環が大切なのです。
専門医とかかりつけ医は、どちらが上という話ではありません。
役割が違うのです。
専門医は、
「その病気を深く診る医師」。
かかりつけ医は、
「その人全体を長く診る医師」。
両方が必要です。
これから高齢者が増えていきます。
一方で、医療を提供する側は無限には増えません。
だからこれからは、
「具合が悪くなるたびに、新しい病院を探す」
という医療から、
「何かあったら、まずこの先生に相談する」
という医療へ変えていかなければなりません。
私は、高齢者の皆さんにぜひ聞いてみたいのです。
皆さんは今、
「私のかかりつけ医は、この先生です」
と名前を言えるでしょうか。
もし言えるのであれば、その先生を大切にしてください。
そして、
「薬を全部まとめて見てください」
「最近歩くのが遅くなりました」
「最近食欲が落ちています」
「最近少し物忘れが増えました」
何でも相談してください。
それが、これからの時代の高齢者を守る医療だと思います。
最後に、私が今日一番お伝えしたいことです。
長生きするために大切なのは、
たくさんの病院に通うことではありません。
あなたの病気だけではなく、
あなたの薬を知り、
あなたの生活を知り、
あなたの家族を知り、
そしてあなた自身を長く診てくれる医師を持つことです。
専門医療が必要なときには、専門医の力を借りる。
そして普段は、
何でも相談できる一人の医師に、ずっと診てもらう。
これから高齢者が増え、医療機関が減っていく時代だからこそ、
私は、
「日本人全員が、自分のかかりつけ医の名前を言える社会」
をつくることが、とても大切だと考えています。
皆さんもぜひ、
「自分に何かあったとき、一番最初に相談する先生は誰だろう」
それを一度、考えてみてください。