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医師は、国家資格です。
なぜ国が医師という資格を与えるのでしょうか。
私は、その原点には、
「目の前の人の命を守る」
という使命があると思っています。
もちろん、医師にもいろいろな道があります。
循環器内科、脳神経外科、整形外科、小児科、産婦人科。
高度な専門医療を担う専門医は、絶対に必要です。
美容外科や美容医療も、必要とする患者さんがいる以上、大切な医療の一つです。
私は、それを否定したいのではありません。
ただ、絶対に減らしてはいけない医師がいる。
それは、
「目の前に困っている患者さんがいたら、まず診よう」
と思う医師です。
胸が痛い。
お腹が痛い。
息が苦しい。
高熱がある。
転んだ。
意識がおかしい。
何科に行けばいいのか分からない。
そんな患者さんを前にしたとき、
「それは私の専門ではありません」
だけで終わるのではなく、
「分かりました。まず私が診ます」
と言える医師です。
私は、これから医師を目指す学生の皆さんにも考えてほしいと思っています。
医師になる理由は、人それぞれでしょう。
安定した職業だから。
社会的な評価があるから。
専門的な仕事がしたいから。
それも否定はしません。
しかし、その一番根っこのところに、
「病気で苦しんでいる人を助けたい」
「できるなら命を救いたい」
という思いを持っていてほしい。
国家資格を取った瞬間から、医師には大きな力が与えられます。
診断することができる。
薬を処方することができる。
検査を行うことができる。
治療を決めることができる。
だからこそ、その力には責任があります。
自分の興味のある病気だけ診る。
自分の都合のいい患者さんだけ診る。
難しい患者さんは全部ほかへ送る。
そんな医師ばかりになったら、困るのは患者さんです。
そして最後には、救急病院に患者さんが集中します。
救急車が増え、
病院が疲弊し、
本当に一刻を争う患者さんを診る余裕まで失われてしまう。
だから私は、国にも強いメッセージを出してほしいと思っています。
日本は、どのような医師を育てたいのか。
単に国家試験に合格する医師を増やすだけではない。
研究のできる医師。
高度な手術のできる医師。
専門分野を極める医師。
それと同じくらい、
「困っている人をまず診る医師」
「命を助けようとする医師」
を、この国は必要としている。
そのことを、医学教育の中で、もっと明確に伝えてほしいと思います。
専門医は必要です。
美容医療も必要です。
大学病院も必要です。
しかし、そのすべての医療の土台に、
「目の前の患者さんを助ける」
という医師の原点がなければならない。
そして地域には、
どんな人でも、どんな症状でも、まず診る医師
が必要です。
何科か分からなければ、まず診る。
重症か軽症か分からなければ、まず診る。
自分だけで治療できなければ、適切な専門医や病院につなぐ。
そして紹介して終わりではなく、その患者さんをその後も診続ける。
私は、そういう医師を
「総合診療かかりつけ医」
と呼んでいます。
日本中に、こういう医師が増えてほしい。
そして私は、
日本人全員が、自分のかかりつけ医の名前を言える社会をつくりたい。
そのためには、制度だけでは足りません。
設備だけでも足りません。
最後に必要なのは、人です。
患者さんを助けたい。
困っているなら、まず診よう。
そう思える医師です。
この医師を絶対に減らしてはいけない。
むしろ、これからの日本で最も増やさなければならない医師だと、私は思っています。
医師は国家資格です。
だからこそ、国にも、医学部にも、そして医師を目指すすべての若者にも伝えたい。
医師になるということは、人の命に向き合うということです。
その原点だけは、
どれだけ医療が進歩しても、
どれだけ専門分化しても、
絶対に失ってはいけない。
私はそう考えています。